2014年08月31日(日)
病原菌フザリウム菌の土壌中でのサイクル [栽培技術]
参考までに・・・・・ 本からのコピペです。
写真は腐敗病の寒蘭から抽出したフザリウム菌の大型分生胞子
フザリウム菌はカビの仲間であり,植物残渣などをえさとして増殖し,分生胞子や厚膜胞子を形成して,生存をつづける腐生的な生活だけを営むものと,腐生的な生活だけではなく,宿主作物の根内部にも寄生して増殖し,根内部で分生胞子や厚膜胞子を形成する寄生(病原)菌とがある。一般的には,耐久性の強い厚膜胞子は,のちに述べる土壌の静菌作用によって,胞子が発芽して発芽管を形成し,さらに活性な菌糸を伸長することができない。ところが,根からの分泌物(主として,アミノ酸や糖類)などによって,土壌の静菌作用が解除されると,厚膜胞子の発芽が促進され,発芽管(菌糸)が根に到達すると,寄生性フザリウム菌は根内部へ侵入して,作物に被害を生じることになる。したがって,土壌中にフザリウム菌の分生胞子や厚膜胞子,とくに,後者が多ければ,一般的には発病の危険性が高くなるということができる。
同一作物を連作すると,フザリウム菌による被害が大きくなるのは,寄生性フザリウム菌によって,根内部で形成される分生胞子や厚膜胞子が,残根中に土壌微生物の攻撃をうけることなく生存することが可能となり,連作年次に応じて,土壌中で総体的に寄生性フザリウム菌の密度が高くなるからである。
土壌の静菌作用(soilfungistasis)
フザリウム菌にかぎらず,多くのカビの胞子は,土壌中で発芽せず,休眠状態のままで生存をつづけることが可能であり,この現象を土壌の静菌作用という。
土壌の静菌作用は,土壌を熱などによって殺菌するとなくなり,ついで,殺菌土壌に土壌微生物の懸濁液を加えると回復する。さらに,この静菌作用の回復した土壌にグルコースやアミノ酸などのえさを充分に与えると,静菌作用は消失する。あるいは,湿度またはpHなどを変えて,土壌微生物の活性を低下させると,静菌作用は低下する。また,殺菌土壌に非殺菌土壌を量を変えて添加すると,非殺菌土壌の量がふえるほど,土壌の静菌作用は低下する。
これらの事実から,土壌のカビの胞子に対する静菌作用に,土壌微生物が関与することは疑いのないことである。
この原因はいろいろあって定説となっていないが,次のことが考えられる。
1)カビの胞子の発芽のために必要な物質が活性な土壌微生物によって消費され,養分欠乏の状態となって発芽できない。
2)他の土壌微生物によって生産される発芽抑制物質であり,この物質の本体についてはまだ明らかになっていないが,非殺菌の自然土壌では,簡単に生産され,静菌作用はあるが,胞子を殺すほど強い殺菌作用はもっていない。また,この物質は,水溶性で気化しやすく,常温では不安定で,熱や紫外線などで失活するもので,セロハン膜を通過するほどの大きさの分子量をもつ化合物であるとされた。最近では,土壌微生物や植物によって生成されるエチレンによるという説がとなえられているが,一般化されていない。
3)土壌の粘土鉱物などであり,胞子の発芽阻害の一因として,土壌の粘土鉱物と胞子の凝集が考えられている。モンモリロナイト,ハロイサイト,アロフェンおよびイモゴライトなどの粘土鉱物の懸濁液にF.oxysporum f. sp. cucumerinum――キュウリの導管部に侵入して急性萎凋をひき起こすフザリウム菌――の胞子を加えると,イモゴライトのばあいだけ胞子の発芽率が低下した。この理由としては,フザリウム菌の分生胞子は水の中で負に帯電しており,とくに,正に帯電している割合の大きいイモゴライトとは凝集を起こしやすい。そのほか,土壌中には鉄やアルミニウムの水酸化物や酸化物が存在し,土壌の反応が酸性のばあい,これらの水酸化物および酸化物は正に荷電するので,これらの物質とカビの胞子とは凝集する。
Posted by 管理者 at 2014年08月31日(日) 18時30分 トラックバック ( 0 ) コメント ( 0 )
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