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2017年08月02日(水)

2.植物が1日に吸収する水分量について [他人之褌]

みんなのひろば 植物 Q&A 検索より

寺島 一郎(東京大学大学院理学系研究科)植物が1日に吸収する水分量について 抜粋

 植物は主として土壌の水分を吸収します。吸収には2つのモードがあります。昼間は、気孔からの蒸散によって葉の水分が奪われるので、葉が乾燥します。乾燥した葉は、道管内の水を吸収します。道管内の水は葉に引っ張られているため、圧力は負となります。根の道管内も負圧です。水を吸収しています。もう一つは、特に夜間に重要なイオン濃度差による水分吸収です。植物は呼吸で得たエネルギーを使って、根の道管内部にイオンなどの「溶質」を送り込みます。道管内の溶質の濃度が高まり、浸透圧が上昇します。土壌の水は浸透圧の高い道管に吸収されます。こうして道管内の圧力が高まります。これが「根圧」です。ヘチマ水は、根圧によって溢泌される液です。

 植物科学では、水分の動きを考える場合に、水にかかる「圧力」と水の「濃度」を考えます。これらが高い方から低い方に水は動きます。上記の蒸散の例では、ほぼ大気圧にある土壌水が負圧下にある道管に流入するのです。浸透圧が高い場合には、溶質の濃度が高いわけですから、水の濃度としてはその溶質の分だけ低いことになります。よく湿った土壌水の水の濃度は高いので、水の濃度の勾配にしたがって、水は土壌から道管内に動くわけです。

 その他に、植物体の表面についた雨滴などの水も吸収されます。よく晴れた、風の弱い夜には放射冷却が起こり、葉の表面が周りの気温よりも下がり結露する場合があります。沙漠などの乾燥地では晴れた夜が多いので、結露からの吸水は植物にとって量的に非常に重要です。パイナップル科にはTillandsiaなどのエアープラントとよばれる一群があります。これらの葉の表面は盾状の毛で覆われています。毛と葉の表面の隙間に溶質濃度の高い(水の濃度の低い)液を分泌し、これで結露を促すのです。エアープラントは、空気の湿度が極端に低くない限り、空気中から十分な水分を吸収できます。これらの植物は、サボテンやパイナップルと同じように、夜間に気孔を開くCAMと呼ばれるタイプの光合成を行っています。

 植物の蒸散の原理は、洗濯物の乾燥を考えると理解しやすいでしょう。濡れた洗濯物の表面ごく近傍の水蒸気濃度は洗濯物の表面温度における飽和水蒸気濃度に近いでしょう。乾燥した空気中の水蒸気濃度はそれよりも低く、この水蒸気濃度の差が蒸発や蒸散の原動力です。洗濯物表面近くには、空気が洗濯物表面との摩擦によってよどんでいて、これが乾燥を妨害します。この空気の層を境界層とよびます。境界層は、物体(洗濯物)の大きさが小さく、風が強いほど薄くなります。洗濯物が乾燥しやすいのは、気温が高く、空気が乾燥した、風の強い日です。小さなハンカチの方が、大きなバスタオルよりも早く乾燥します。日差しが強く、気温が高いと、洗濯物の表面の温度も高くなります。このため、飽和水蒸気濃度も高くなり、空気中の水蒸気濃度との差が大きくなります。風が強く、洗濯物のサイズが小さいと、境界層が薄くなり、蒸発が妨害されにくくなるのです。

 葉の表面はクチクラ層で覆われた表皮細胞があり、実際の蒸散は、気孔とよばれる穴を通して行われます。気孔がよく開いた時の穴の面積を合計すると、葉の表面積の1~2%程度になります。ちょっと不思議に思えますが、表面の98%以上が覆われていても、風が十分に強く境界層が薄い場合には、同じサイズの洗濯物とそれほど遜色がないほど蒸散するのです。重い洗濯物が、からからに乾くことを思うとその量はかなりのものでしょう。

 植物の蒸散量は、気孔の開き具合と気象条件によります。蒸散が盛んに行われるとき、森林全体では、雨量と同じ表し方をすると、1日あたり数mmの蒸散量となります。樹木1本あたりでは、木のサイズにもよりますが、数十から数百kgの水を蒸散します。草本植物の蒸散量は樹木よりも多くなることがあり、草原や耕地の蒸散量は1日あたり、10 mmに達することもあります。これらは森林や草原の例ですが、孤立個体では、群落状態よりも大きな値を示す傾向があります。群落内部では、高湿度化、風速の低下などによって蒸散が抑えられているためです。草本植物が蒸散を盛んに行う場合には、その生重量と同じくらいの水を吸収し蒸散をするという見積もりになります。

Posted by 管理者 at 2017年08月02日(水) 10時27分   トラックバック ( 0 )   コメント ( 0 )

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