2011年08月13日(土)
根の構造 [寒蘭の勧め]
澤先生の記述から
「根の最外部はヴェラーメンといわれている根被で覆われている。
根被は数層の細胞層よりなり、その細胞には内容物がなく中空になっているので、ちょうど海綿のように水を吸い込んで水を貯えることが出来る。この細胞の表面(細胞膜)には網目状に肥厚した部分があり、それが斜めに交差した網目模様を呈している。細胞が給水したときにはその網目が広がるのが観察される。これは網袋で細胞を包み、吸水しすぎによる細胞の破裂を防ぐ働きをしている。根被細胞はこの貯水作用の他に、そとからの機械的な刺激から根を守り、根が傷つくのを保護する役目もある。」
【画像は5〜6年生の根の付け根当たり:成熟根】
根被が白く見える。
【輪切り状態】
この部分は表土近くで比較的乾燥しているため、根被は乾燥して空気が入っている。
中心柱もしっかりしていてはっきり見える。
【こちらは幼根の先端】
根被は水分を含み皮層細胞と同じように半透明である。
【根被】これ以下は先の成熟根の画像
根被部分。右が外界だが、表皮は見られない。
若い根の先端には表皮が存在する。
【上の拡大】
ヴェラーメンがよく見える。
【皮層と中心柱】
中心柱近くの皮層細胞には内容物がほとんど見られない。
【中心柱の拡大】
皮層と中心柱の境には一層の内皮が確認できる。
中心柱には中央部の細胞の塊(随)の周りに維管束が走っている。
この時点では維管束の道管と師管は空で向こうが見えていた。
大きい穴が道管で小さな穴が師管でしょうか?
【別カット】
こちらの維管束には空気が入って泡状に見える。
【上の拡大】
フザリウム菌はこの道管に菌糸を伸張させる。
「菌糸が蔓延すると道管が詰まり水が上部に行かなくなる。そのため葉の元が枯れて落葉する。」と言われています。私は未観察。
【幼根先端の根被】
古い根とだいぶ違っている。
外界との境がなめらかで最外部には表皮のような細胞が確認できる。
【成熟根の外皮部分】
上の黒っぽい細胞が根被。その下に一層の外皮がある。外皮の所々に水を通す通過細胞がある。外皮の小さな細胞がそうだろうか。
澤先生の記述から
「カンランの根には根毛がなく(根の発生初期にはあるがまもなく消滅してしまう?)養分や水分は根被細胞を通じて吸水されている。このためハイポネックスなどの化学肥料を施す際には充分注意しなければならないことがある。それは植物体に影響がなさそうな濃度の液肥を与えたとしても、その後、鉢内が乾燥するにつれて、液肥を吸った根被細胞内での水分は内部への移行のみ行われ、それを補充すべき外からの水分の供給が少なくなり、その結果、根被細胞内の液肥の濃度が高くなり、結局、高濃度の液肥を外皮に施したと同じ状態になって濃度障害を引き起こすことになる。したがって、鉢内が乾燥しないように常に注意して管理するならば普通の草花と同程度の濃度の液肥を施してもかまわないが、それには手間がかかるし、逆に加湿になりやすい。したがってランに化学肥料を施すときは、草花などに施用するときよりも三〜五倍に薄め、そのかわりに施す回数を多くして灌水代わりにかけるようにすることである。」
自分は入門当時この本を読んだため、基本的に化学肥料や液肥の施用はしてこなかった。
Posted by woods at 2011年08月13日(土) 16時26分
コメント
この記述は40年前の澤先生のものですが、他にこのような解説のある本はみたことないです。
なかなか新しい農薬は出てきませんね。
色んな野菜にフザリウム病があるのですが、感染しないように予防する農薬しかないです。
栽培の本に、ここまで踏み込んだ施肥の解説があれば、根を傷めることが少なくなると思います。
道管内に入ってフザリウム菌を殺す薬の開発が望まれますね。
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